「どくれもん」たちの漁師レシピ。

川島昭代司さん

中土佐町 ど久礼もん企業組合 川島昭代司さん


ど久礼もん?

組合名になっている「ど久礼もん」。なかなか耳慣れない言葉だが、これはただの造語ではなかった。土佐弁で「どくれちゅう」というと「ちょっとひねくれている、かわっている」といった意味を持つらしい。しかし、川島さんは、ネガティブに使われているその言葉を調べていくうちに「子どものような視点で、人があっと驚くようなことを考えができる人」のことを指すと知り、まちの「久礼」とかけて、組合の名前に採用した。今や土佐久礼の「どくれもん」は、県内にとどまらず、全国でも名を馳せる町おこし組合の一つとなって、広がりを見せている。その主人公のストーリーを聞いた。

海の男から陸の男へ

どくれもんの代表理事である川島さんは、現在66歳。中学を卒業してからカツオ漁師として、フィリピン沖から北海道まで、まさに太平洋をまたにかけ釣り竿1本、カツオに命をかけていた。釣れるときは、なんと2秒に1匹釣れるような大漁に恵まれたこともあったという。あまりの大量ぶりに船頭が「頼む!もう釣るな!船が沈む!」と叫ぶなか、どんどん釣れてしまう目の前のカツオと戦ったと臨場感たっぷりに語ってくれた。今は、そんなエピソードを小学生に向けてクイズ形式で話しているそうだ。船に乗ったことのない小学生たちが、身を乗り出して話に食いつく姿が目に浮かぶ。

30歳を前にして船上での仕事を卒業し、陸で自営業を始めた川島さん。これがきっかけで商工会議所の青年部に入り、生まれ育った土佐久礼のまちづくりについて考えるようになった。様々な議論を重ねながら2007年、現在の組合を4人で出資して立ち上げ、大正町市場の商品をインターネットで販売する事業が始まった。

いつものレシピが、珍味になっていく

当初はなかなか売り上げが伸び悩んだというが、漁師レシピを新規商品開発すると、「漁師のラー油」が大ヒット。「しょうがの恋」を発売すると、テレビの取材があり、とある芸能人が「危険な味」と紹介したことで注文が殺到したという。確かに、しょうがの恋。味のイメージがつかないだけでなく「危険な味」なんて紹介されたら、気になって仕方が無い。そのネーミングセンスたるや、漁師ならではのユーモア溢れる人間味が伝わってくる。「自分たちが普通だと思っていることも、ほかの人たちが珍しがって買いゆうから、面白いやねぇ。次は何をやったらいいか教えてちや」と気さくに相談を持ちかけられ、取材は一転、土佐久礼活性ブレスト会議となった。都会の人たちが、都会の非日常を求めてくる。しかし都会の人たちの非日常が何なのかがわからない。私たちが「鰹が釣りたいとまでいわず、漁師さんの船に乗るだけでも非日常なんです」と伝えると、「わしなんか、車で15分ばぁ(15分程度)で行ける歯医者に、帆を立てヨットで歯医者に行って一日がかりじゃぁ」。ヨ、ヨットで歯医者に通う!なんて贅沢な通院生活なのでしょう。驚きとあこがれ。ゆっくりと流れる時間と余裕ある心持ち。都会がすっかりさっぱり忘れ去ったユーモアが、土佐久礼町づくりの主人公の中に、しっかり根付いている。

荒波を乗り越えた漁師の言葉ぶりは、まっすぐで、豪快で、懐の広さが毛穴からにじみでている。時折見せる大きな笑顔の波に、聞き手の私たちはぐいぐいと飲み込まれていくようだった。端的に結論を言わないと、会話ができないという、船の上の常識。方言だからどうこうではない、都会では感じられない魅力を節々に感じるのであった。

高知は元気が出てきていると思う。

「今、高知は人口が減りゆうけど、元気が出てきている感じがするわ。あちこちで面白いことが起こりゆうと思う。土佐久礼も、新しいプロジェクトを立ち上げて、雇用の創出。賑わいの創出。新商品の創出を目指して頑張っちゅうわけや」と町おこしの主役は語る。

週末には多くの観光客が集まっては、漁師の奥さんたちが想像を絶するおもてなしでお迎えをしてくれる土佐久礼大正町市場。現在は年に2度のフリーマーケットも、今後は年に4回の開催等も検討中とのことで、今後さらにチャレンジを続ける川島さん。しかし、課題も多い。観光客が中心となったこの市場には今や生魚を買って帰る人は少なくなってきているだけでなく、夏場は新鮮な魚も鮮度を保つのが難しい。町の賑わいを、いかに町の潤いにかえていくか。バスツアーでちらっと見て帰るだけの場所から、長く滞在したくなる町へかえていくか。漁師たちによる陸での戦いはこれからが本番といわんばかりであった。

よさこいネット
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