タベアルキスト・マッキー牧元の高知満腹日記「あんた、土佐清水市民のソウルフード『ぺら焼き』知っちゅう?」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。


「もう10年は頑張らんとな。ははは」。
75歳になられた、元祖ぺら焼き「にしむら」の三代目店主中山郁子さんは、そう言って笑われた。
お母さんもおばあちゃんも、80過ぎまで焼いていたという。


土佐清水の人たちのソウルフード、「ぺら焼き」とはなにか?

小麦粉と水、卵液を混ぜた生地を、鉄板に薄くのばす。
宗田節粉、青ネギ、天ぷら(さつま揚げ)を乗せたのち、生地を注ぐ。さらにもう一個卵を割って溶き、かける。
そして裏返し、コテでペタペタと押さえる。

また押さえたら、ソースを塗って折りたたみ、上にソースを塗って完成である。

小麦粉と水や卵を使いながら、各地のお好み焼きやもんじゃ焼きとも違う。

各地のそれは、「文字焼き」と呼ばれる、小麦粉を水で溶いた液を鉄板で焼いた料理から発展していったと言われるが、この「ペラ焼き」は、原型に近いものかもしれない。
その呼び名は、ヘラを使って焼くから、あるいはペラペラに薄いから付けられたといわれている。

とにかく、いつの間にか土佐清水の人々の心と舌に忍び込み、なくてはならぬ料理となった。

中山さんは、鮮やかな手つきで、ものの1分ほどで作り上げた。
食べればふんわりと唇が触れ、噛めばモチっとして、厚めのクレープといった風である。
具が少なくとも、生地が薄くとも、人を笑顔にする力がある。
中濃ソースでもウースターでもよし。中には具を入れないで、醤油を塗って食べる人もいると言う。
生地をこよなく愛しているのだろう。
店内には、深夜食堂の安倍夜郎さんが書いた似顔絵が飾ってあった。
「そっくりですね」と言うと
「そやね。シワの数まで似とる。はははは」と、笑われた。

新種のペラ焼きも、見逃せない

もう一軒の店「タッチ」も尋ねた。

ペラ焼きハシゴである。

こちらはペラ焼きだけでなく、お好み焼きもやっている。

こちらでは、ベーコン、キャベツ、チーズの入った新種の「洋風ペラ焼き」がいただける。

同じように作るが、具が多い分、上から生地を少し垂らして伸ばし、裏返して焼く。

そしてヘラでペタペタと押えながら広げていく。

大阪あたりのお好み焼きでは、上からヘラで抑えようとすると「押えるな!」と叱られるが、ここは逆である。

やがてソースと青のりがふられ、大きな円盤状の「ペラ焼き」が完成する。

薄く大きいお好み焼きといってしまえば簡単であるが、お好み焼きとは距離を隔てている。

あのふっくらがない。

具が増えた分、生地の頼りなさが、妙に愛おしくなる。

その侘しさが調味料となって、しみじみとうまい。

料理とは、ゴーカだけではいけない。

そんな情緒を、「ペラ焼き」は教えてくれるのであった。

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