タベアルキスト・マッキー牧元の高知満腹日記「命をつなぎ、人をつなぐ生姜」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

 

「シャキッ! パシュッ!」

生姜が弾けた。

「まだ生きているよ!」 と叫びつつ、生姜のジュースが口のなかにほとばしった。

こんなにもみずみずしい生姜を食べたのは、初めてである。

そう感想を述べると、生姜農家「りぐる」の高橋孝典さんは、恥ずかしそうな笑顔を浮かべられた。

高橋さんは、元々百合農家だった。

現在でも百合は作られている。

百合の作り方の教えを請う人が絶えないほど、全国でも有数の優秀な百合を作っているという。

しかし高橋さんは、生姜作りにも知恵と工夫を傾けた。

土壌の改良を重ね、土ごと発酵させて8年して、生姜を植えた。

収穫は通常、朝から昼にかけて行われるが、彼はまだ陽が上がらぬ4時ごろから収穫を始め、日の出前には終わる。

そうすることにより、たっぷりと水分を含んだ生姜が収穫できるからである。

睡眠時間を削り、暗いうちから収穫するのは相当の苦労だろう。

しかし、おいしい生姜を生み出すためには、苦労を厭わない。

それこそが、生き物に対する恩返しなのだろう。

流通も変えた。昔は四日目に店頭に並んでいたところを、早朝収穫、洗浄、梱包し、その日のうちに各店舗に届けることが可能になった。

生姜は、11月に種芋を植え始め。6月から7月上旬に収穫する。

「高知という土地ならではの、冬場の日光の強さがたくましい生姜を育てます」。

食道を引き締め、涼を通す、力ある生姜

「新生姜はこうやって食べるのがうまい」という、高橋流新生姜料理をいただいた。

新生姜、キュウリ、ハムを薄切りにして、マヨネーズで和えたものである。

 

噛むと、前歯で生姜が「シャキッ」と音を立てる。

食感は、新鮮なセロリのようでもあり、生じゃがいものようでもある。

口の中で水分が弾け飛ぶが、辛くない。

爽やかな香りが鼻に抜け、そのあとしばらくしてから辛味がやってくる。

本来生姜とはこういうものなのだ。

今まで食べてきた生姜は、生姜の一夜干しではないかと思うほど、水分含有量が違う。爽快感が違う。

暑い時期に食べ、食道を引き締め、涼を通す。

これがこの新生姜の役目である。

新生姜を指でつかむと、指が濡れた。

しっとりとして、きれいな肌をしている。

これは生姜の少女なのだ。

みずみずしさと生きる勢いが伝わり、恵みの感謝を感じることができる生姜なのである。

農家の名前「りぐる」とは、高知弁で「物事を吟味する。深掘りする。工夫する」あるいは「かっこつける」という意味だという。

かっこつける。いいじゃないですが、高橋さんもっとカッコつけてください。

生姜の滋味を探り、土を吟味し、より良い生姜を作って、カッコつけてくださいね。

最後に聞いた。

「高橋さんにとって生姜とはなんですか?」

「“繋がり“です。生姜を、命を繋ぐために仕事として栽培したり、家族が繋がり、そして、普通なら絶対に繋がることの無い、様々な方ともお会いする機会ができたりと。なので僕にとって、生姜とは”繋がり“なんだと思います」。

そう言って、充足した、穏やかな笑顔を浮かべられた。

 

 

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