タベアルキスト マッキー牧元の高知満腹日記「高知の濃ゆい焼きそばに恋をしたの巻〜第一弾」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

「わわわ」。

自分の目を疑った。

ここは、店も人家も無き街道に、ぽつりと店を構える、高知県香南市夜須町にあるお好み焼き屋、「廣末屋」である。

「焼きそばがおいしいんです」と、誘われてやってきた。

メニューには、「焼きそば」、「塩焼きそば」、「ニラ塩焼きそば」とあるが、ここではなにがどうあっても、「ニラ塩焼きそば」を頼まなくてはいけないという。

頼むと、お母さんが鮮やかな手つきで作り始めた。

豚ばら肉を炒める。

イカゲソ、玉ねぎと人参、ニラの茎部分を入れて炒める。

その上に麺を載せ、塩ダレを投入して、炒め合わせる。

麺の薄黄色、人参のオレンジ、玉ねぎの白、豚肉の茶色、そしてニラの緑と、色のバランスもいいニラ焼きそばだなあ。

そう思っていた時である。

お母さんは、右手でニラの葉を大量につかむと、ドサっとその上にかぶせた。

「えっ? そんなに入れちゃうの?」。

もはやニラしか見えない。緑一色である。

やがて炒めるが、麺も豚肉も他の野菜も、ニラの緑に埋没した。

仕上げに、揚げ玉と海苔、糸唐辛子を載せ、完成である。

これは「ニラ塩焼きそば」というより「そば入りニラ塩焼き」と言った方がいいんじゃないか。

そんな風貌である。

「うまいっ」。

口に運んだ瞬間、思わず叫んだ。

ニラが甘い。

麺とニラの量が逆転して、ニラ炒めの中で、時折麺に遭遇するといった具合だが、とにかくニラがうまい。

柔らかくて、シャキシャキとちぎれて、歯に挟まることがない。

しなやかに他の具や麺と抱き合う。

甘く、香り高く、ワシワシ猛然と、鼻息を荒くして食べさせてしまう力がある。

途中でレモンをかけると、その酸味がいっそうニラの甘みを生かした。

ああ、箸を運ぶ手が止まらない。

聞けば周りがニラ畑なのだという。

「朝穫れ、産地直送じゃなきゃ、この味は出せないの」と、お母さんはいう。

春夏の露地物は香り高く、秋冬のハウスものは柔らかく、どちらも捨てがたい。

「最初はこんなにたくさん入れてなかったの。でもね、やっているうちにだんだん多くなっちゃった」。

そう、「廣末屋」の女主人、広末京子さんは、嬉しそうに言われた。

ん? 聞いたことのある名前。

「名前、一字違いだから、お母さんですか? とも聞かれます」。

これまた嬉しそうに、話されるのだった。

京子さんとニラの香りに会いに、もう一度行きたい。

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