タベアルキスト マッキー牧元の高知満腹日記「新子の初々しさに、恋をしたの巻」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

年の頃なら、16歳くらいだろうか。

若々しさに満ちた味には、恥じらいがあって、それが舌を焦らす。

噛めば、微かにモチッと歯の間で弾み、まだ色気はないが、これから伸びようとする命の息吹が溢れ出る。

その切なさがいい。

一瞬を切り取った、いたいけな刹那がいい。

仏手柑の皮の香りが、その切なさに優しく寄り添って、命をいただく感謝を膨らます。

この時期にしかない「新子」、ソウダガツオの子供である。

とても傷みやすく、獲ってから半日以内に食べなくてはいけないという。

その希少さも手伝って、新子のありがたみが深まっていく。

この時期はカツオより新子ぜよ、となるそうだが、やはり「ゆう喜屋」は、そんな時期でも素晴らしいカツオを用意していた。

ほら、どうでしょう。

もはやその姿は、凛として、手をつけるのをためらうほど神々しい。

冬に向かって脂を溜め込む前であるこの時期のカツオは、色気と潔さが入り交じった、自然の不思議を抱えている。

この上なく新鮮で、噛めばねっちりと舌にしなだれ、品のある脂の甘みの奥に、ひっそりとたくましい鉄分が眠っている。

一片の刺身が、意志を持ったかのように崩れていき、僕はカツオとディープキスをしている錯覚に陥って、溶けてしまった。

そして今度はキンメである。

いつも食べている、あのキンメである。

しかし、あの野暮ったい、じとっと舌にまつわりつく脂を感じない。

脂はのっている。

だが、さらりと舌を流れていく。

脂の甘みに品があって、えばっていない。

伊豆より海が高温なのに、身も味も脂もだれていない。

これが高知のキンメだという。

カボスを絞って、醤油にチョンと、少しだけ浸けて食べる。

シコッ。

活かった身に歯が食い込むと、優しい甘みがゆるゆる流れて、笑いたくなる。

突然なぜか、中谷美紀がこのキンキの刺身を食べるところが見たくなった。

高知「ゆう喜屋」にて。

 

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