タベアルキスト・マッキー牧元の高知満腹日記「土佐の“ブリわた”は、うますぎて危険です」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

「子供の頃はね。泣きよったらブリ食わすぞいわれてね。そんくらい、安うて、しょっちゅう食べよったがよ」。

田中鮮魚店の主人田中さんは、そう言って笑われた。

尋ねたのは3月初めだというのに、店頭には丸々と太った天然ブリが横たわっている。

その立派な姿を見て歓声を上げたら、すかさずそう言われた。

ここは全国の市場ランキングで9位に推された、中土佐町にある久礼大正町市場である。

人気店、田中鮮魚店の店頭には太刀魚やブリ、モンゴイカやかますなどのおなじみの魚に混じって、ベンケイやウツボなど馴染みの薄い魚も並んでいる。

「カツオ? カツオはまだ早いねえ。まだあがってない」

そう言いながら、様々なカツオ料理を教えてくれた

「カツオの中骨は筍と煮ると美味いがよ。酸味と旨味を筍が吸うてね。あとくるぶしいう部位もあってね。ここが甘い。別名犬殺しともいうがよ。犬が食うと骨が喉詰まって苦しむが」。

この田中鮮魚店の素晴らしきところは、向かいに直営の食堂があり、店頭に並んだ魚を選んで料理してもらい、食べられるところにある。

早速、珍しいベンケイやブリの白子、そしてブリと白イカをお願いすることにした。

胃袋をつかむ胃袋たち

そして、どうにも気になったものがあった。

「ブリわた」である。

様々なブリの内臓が、詰められて輝いている。

これはどうしても食べねばならないと思って尋ねると、「これはニンニクの葉と一緒にして、すき焼き風に甘辛く煮つけるとうまいがよ。でもニンニクの葉がないとね」。

「ニンニクの葉がないとだめですか」。

「ダメやね」。

しかしこれはどうしても食べねばならない。

そこで市場の八百屋に走った。

店頭には、ニンニクの葉がない。

「ニンニクの葉ありますか?」

「うーん。昨日のでよかったらあるよ」といって奥から出してきてもらった。

お代を払おうとすると、「いや昨日のやから、お代はいらん」。

さすが大正町市場。太っ腹である。

言葉に甘えてニンニクの葉を掴んで戻った。

「ニンニクの葉ありました!」

「よし、そんなら作ろうか」。

まず刺身が並ぶ。ブリの刺身は、実にしなやかで、塩をつけると甘みが引き立つ。脂が入っていながら、しつこさやいやらしさがない。

白いかは甘く。ナマコは柔らかい。

ベンケイの食感はアジに似て、微かに肝の風味が漂う。

小さいのに、マナガツオの刺身のようなエロさがある。

ブリの白子は、ふんわり甘い。

そしてブリわたである。

心臓は凛々しく、シコシコと弾む腸はその食感が楽しく、肝臓にはねっとりとした甘みがある。

全体にコラーゲンの甘みが溶け込んで、それが醤油と砂糖の甘辛味と相まって、ご飯を呼ぶ。

時折香る、ニンニクの葉の刺激的な香りが味を引き締め、飽くことがない。

「こりゃあ。たまらん。すいません、お酒頼んでいいですか」。

ううむ。昼の田中鮮魚店には、嬉しい危険が待っている。

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