高知家の◯◯
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魚屋の立ち飲み割烹から高知の本格割烹料理店に進化した「うを兼」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

この情報は2021年5月23日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、魚屋さんの店頭での立ち飲みから本格割烹店に進化した吾川郡いの町「うを兼」で舌鼓。

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以前紹介した「魚兼」という魚屋さんを、ご存知だろうか?

国道に面して営まれていたのだが、週末だけ店先で、和食のコースを出されていた。

その料理が、とても魚屋さんが作ったものとは思えないもので、高知のどの和食屋と比べても抜きん出ていた。

それもそのはず、店主岡崎さんは、今は無き京都の名割烹「あと村」で長年修行されている方だったのである。

本格割烹料理が、店先で立ち飲みしながら、食べることができるという、日本での唯一の店はたちまち評判となった。

【記事】日本一幸福にしてくれる魚屋さん「魚兼」

そこで岡崎さんは、さらに新たな一歩を踏み出された。

魚屋の店舗を閉め、その裏に家屋を建て、去年の暮れに本格割烹料理屋「うを兼」を開店したのである。

新鮮な清々しい空気が漂う店内に入ると、いつもの岡崎さんがいた。

しかし格好が違う。

魚屋のご主人然とした服装ではなく、一流割烹店と同じ白い割烹着をきりりと着込んでいる。

表情は以前と同じく柔らかく、人懐こい笑顔を浮かべていられるが、立ち姿は凛々しい。

食べるこちら側も背を正して、料理と向かいあおうと気合が入る。

春のお料理は以下である

 

★先付

京都半兵衛麩の生湯葉と青菜

生麩の淡い甘さに青々しい香りを添えて、食欲をくすぐる

 

★八寸

からすみ 筍の木の芽あえ 蕨といり雲丹 茗荷の卯の花寿司 鯛皮煎餅

黒塗り膳の上に置かれた、ヒノキのお敷が空気を引き締める。

以前からの名物卯の花寿司もさらに整えられて美しい。

春の海と山の恵みを盛り込んだ、酒が進む八寸である。

 

★煮物椀

コチの丸仕立て

おつゆの味もさらに洗練されたようである。淡く深いつゆの味わいに、コチの脂が溶け込んでいき、次第にクライマックスを迎える。

 

★お造り

アラの昆布締め

猛々しいアラの味わいに昆布の旨みを加えて丸くしている。これまたなんとも麗しい盛り込みである。

キハダマグロ

 

★酒肴

山芋このわた和え 蛸の桜煮 そら豆白和

どれも味が行き過ぎていない。蛸やそら豆、山芋の味に敬意を払いながらも、酒が恋しくなるような味わいで、実に憎たらしい。

 

★煮物

鮑、筍、蕨、焼麩の小鍋仕立て

鮑の滋味に酔い、筍の淡い甘みに目を細め、蕨の苦味に息を吐き、焼麩の香ばしさに心が温まる。

春への感謝が湧く料理である。

 

★強肴

土佐あか牛のイチボのローストビーフ 山葵菜のおひたし

最近の割烹は牛肉を出す店が多い。

炭火焼にされるところが多く、それはそれで美味しいと思うのだが、料理の流れという点では疑問が残る。

しかし、こうしてローストビーフにし、さらりと出されるのは、事前の魚介や野菜、山菜の流れを断ち切らずいいと思う。

脂がいやらしくなく、すっきりとしているところもいい。

 

★揚物

芝エビ、ウド、銀杏、ゆりね、三つ葉のかき揚げ

どれも揚げられて、さらに甘みと香りを膨らます。別々の食材ながら、どれも程よい火の通しにされている精妙さに唸る。

 

★焼物

あらの西京焼き 鯛の子 はす

先ほどのアラを西京焼きで。

高知でアラは珍しい。西京焼きも珍しい。しかしそれは、魚屋としての仕入れと京都で修行した知識と技術への矜持なのだろう。

西京の味とアラの旨みが抱き合って、高みに昇っている。

 

★留椀

焼きおにぎり、からすみがけ

締めが炊き込みご飯ではなく、素朴な焼きおにぎりというのも、心温まる。

しかもカラスミがけであるから、また酒が飲みたくなってしまうではないか。

 

★甘味

土佐ジローのアイスと仁淀川の山椒

甘味も高知の食材の組み合わせ。土佐ジローの甘味を仁淀川の山椒が引き締める。

 

高知の食材を駆使した、料理をぜひ試されたい。

昼は1,500円の弁当と3,000円、5,000円で夜は10,000円のコースとのこと。

美食の県、高知の可能性を新たに広げてくれる店の誕生がうれしい。

 

高知県吾川郡いの町「うを兼」にて