高知家の◯◯
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美学が息づく、米と卵だけのいさぎよき玉子焼きめし「ラーメン チョンマゲ」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

この情報は2021年6月27日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、お米と卵だけで作った、いさぎよい玉子焼きめし高知市の「ラーメン チョンマゲ」を訪ねました。

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出された瞬間に、息を飲んだ。

潔い炒飯、いや、焼めしである。

まん丸にまとめられた「チョンマゲ」の「玉子焼きめし」は、艶々と輝いて、我々を誘惑する。

そこには、チャーシューもネギも見当たらない。見えるは、米と卵だけである。

ああ、それなのに、どうしてこんなに誘われるのか。

それは自信かもしれない。

焼きめしには具は要りません。なぜなら、玉子とお米で十分においしいのですから。

我々は、玉子とお米で誰にも負けない焼めしを作ります。

潔い姿の焼めしは、そう言って佇んでいる。

その姿勢に、惚れてしまう。

さあいつまでも眺めているわけにはいかない。

レンゲを手に取って、焼めしをすくう。

「いやん。崩すのね」と言われているようで、どきりとする。

口に運ぼうと、あんぐりと開けた口へ甘い香りが流れて来た。

玉子と米の甘い香りがそよいでくる。

はらり。はらり。

舌の上で、米と卵が舞う。

よくおいしい炒飯の表現で、コメがパラパラに炒められていると言うが、この焼めしはそうではない。

確かに米は一致団結しているようでいて、一粒一粒が自立している。

だが、それはパラパラではない。

米自体の甘い水分を含んで、踊りの名人の如く、流麗に舞うのである。

そして卵の甘みが口いっぱいに膨らんでいく。

春の陽だまりのような、幸せに満ちた暖かさが、体の中に落ちていく。

米と卵だけで、これだけの幸福感を増幅させるとは、なんと素敵な料理なのだろう。

食べるほどに心が優しくなってくる焼めしである。

聞けばこの焼めしは、オーナーが以前愛したものであるという。

かつて高知市内に、「風珍」という店があって、そこの名物がこの焼めしだった。

閉店を嘆き悲しんだオーナーが、なんとかあの味をと試行錯誤し、2年かけて間違いなき味を生み出せたのだという。

おそらく、これにチャーシューなど余計な具は要らない。

玉子と米の、互いの甘い蜜月を、ただ楽しむための料理である。

そしてこの店はこの焼きめしだけでなく、さらにおいしいものがある。

種米のような、皮がおいしい全粒粉皿ワンタンや、

麺に風味があって、噛めば噛むほどおいしいラーメンもおすすめである。

このシンプル極まりない焼めしには、美学が息づいている。

それは、「料理は単純な方が良い」という小林秀雄の言葉さえも、想起させるのであった。

 

高知県高知市追手筋「ラーメン チョンマゲ」にて