高知家の◯◯
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メニューの数が凄い高知の本格フレンチ「ラ・ヴィルフランシュ」美食おじさんマッキー牧元の高知満腹日記

この情報は2021年7月4日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす美食おじさんマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は、いまでは珍しくなったアラカルトでいただく本格フレンチ「ラ・ヴィルフランシュ」を訪ねました。

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高知市追手筋にあるフレンチ、「ラ・ヴィルフランシュ」。

ドアを開けて驚いた。

満席である。

年配の客に混ざって、若い客もみな、いかにも楽しそうな笑顔を浮かべながら、料理を食べている。

なかには、食後酒まで楽しんでいるお客さんもいるではないか。

失礼ながら、高知にフランス料理は似合わないと、勝手に思っていた。

太陽輝く土地に、南仏料理は合うかもしれない。

だが、重厚でクラシックな料理は根付かないのでは、とも思っていた。

メニューを開いてさらに驚いた。

料理のラインナップが、多いのである。

日本一フランス料理店が多い東京でも、アラカルトで用意する店は激減し、ほとんどがコース料理のみだというのに、この店はアラカルトがずらりと並んでいるではないか。

メニューの数がすごい。

フォアグラのソテーやキジのガランティーヌなど前菜が10種類、今ではフランス料理店でほとんど見かけなくなってしまったスープ類が3種類。

舌平目のポーピエットなど魚料理が5種類、赤鹿のグロゼイユと黒胡椒のソースといった、堂々たる肉料理が7種類もある。

さらには、リードヴォーのソーセージやシャラン鴨のローストなど、本日のおすすめ料理が10種類ほどある。

そして3月ゆえに時期ではなかったが、「季節のジビエ」と手書きされたメニューには、野鴨(コールベール)、山鳩(ピジョンラミエ)、雷鳥(グルーズ)、赤シャコ(ペルドルージュ)、山ウズラ(ペルドグリーズ)といった名前が並んでいる。

フランス料理好きだったら、もういてもたってもいられなくなる料理ばかりである。

心の中で「落ち着いて」と囁く自分がいる。

深呼吸をしなおして、店内を見回してみると、さらに感心した。

たくさんのリトグラフや油絵が飾られ、板張りの床やテーブル椅子に、時代を重ねたものだけが持つ味がある。

見ていると、ほとんどが常連なので、メニュー見て給仕に伝えるのではなく、挨拶に来たシェフと、どういう料理を食べたいか相談しているではないか。

実にいい。

もうコーフンして、今日は取材で5食ほど食べたというのに、前菜にスープ、肉料理と頼んでしまった。

前菜に選んだ「オマール海老のテリーヌ」は、海老の香りが濃く、オマール本来の甘みに満ち満ちている。

そんな甘みを、オゼイユが入ったキレのいい酸味のクリームソースが持ち上げる。

食べた瞬間に、ワインが恋しくなる、フランス料理のエスプリに満ちた料理である。

続いて魚介のスープ、スーブ・ド・ポアソンがやってきた。

ああ、なんと滋味深い。

海の豊穣が、一滴一滴に濃縮している。

「おいしい」。

思わずため息に似た声が漏れ出た。

そして主菜は、「鳩のアンディーヴ添え」である。

鳩肉を噛めば、しっとりと鉄分に富む肉汁がにじみ出た。

ソースは、もう今では見なくなってしまった、クラシックなエスパニョールソース風(デミグラスソースの原型になったソース)である。

重厚でいながら、鳩肉の品格を上げ、ともに高みに昇っていこうとする気配がある。

大至急、赤ワインを欲する、色気に満ちたソースに酔いしれた。

店は1977年からで、生まれも育ちも高知だというシェフは、現在72歳だという。

料理の秘訣を聞けば、

「エスコフィエ(現代フランス料理を形作り、体系化した巨匠、オテルリッツ総料理長)がやりたかったことが、アラン・シャペルやポール・ボキューズ(いずれも現代フランス料理を語る上で、欠かせない巨匠)がやっていることがわかったんです」

そうおっしゃった。

うむ、言葉が深い。深すぎる。

今度はその真意を探るために、冬に来てジビエを食べなきゃ。

 

高知県高知市追手筋1丁目「ラ・ヴィルフランシュ」