高知家の◯◯
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「高知のすごすぎる卵かけご飯、TKG攻撃の巻」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記

この情報は2019年1月20日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

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年末の高知満腹旅で、ふた晩続けて、TKG攻撃を受けた。

まず最初は、高知市内の割烹「座屋」である。

ここでは締めとして、土鍋で炊いたご飯が出される。

「今炊き上がりました」と、料理長が鍋ふたをとって見せてくれる。

白く輝くご飯から、甘い香りが流れて顔を包む。

炊き上がりのアルデンテを、料理長は一文字にすくい、よそってくれた。

ご飯には、ウブな甘みがあって、米一粒一粒に主張がある。

高知県産、仁井田米ひのひかりには、優しさと力強さがあって、日本人として生きる勇気を与えてくれる。

ご飯単体のおいしさの余韻にうっとりとしていると、次はTKG卵かけご飯であるという。

卵は、いの町の土佐ジローの卵である。

卵を溶く。そこに醤油を垂らすのかと思いきや、料理長は、ご飯に直接醤油をごく少量だけ垂らした。

その醤油は、出汁と合わせた醤油だという。

そして溶き卵を流し込み、入念に混ぜる。

黄金色に混ざり合った、TKGが出来上がった。

ズルルル。卵かけご飯を描き込み、流し込む。

ああ、なんということだろう。

土佐ジロー特有の濃い甘みとご飯の甘みが一つとなっている。

卵のヌルヌル感なく、炊きたてご飯の熱によって黄身が加熱され、そこに出汁醤油の旨味が溶け合っている。

これは出汁巻き卵ご飯である。

炊きたての、熱々でなくてはできない卵かけご飯だという。

笑いが止まりません。

大変危険なTKGなのであります。

しかし、至福な時間はまだ終わらない。

料理長は別の茶碗にご飯をよそうと、高い位置から塩を慎重に振り始めた。

塩ご飯である。塩と米だけである。

塩によって甘みだけでなく、香りも際立つ。

なにかこう、食べる人間におもねることのない、孤高の気品が漂っている。

「まだ終わりではありません」。

料理長は、新たにおこげを茶碗によそうと、そこに醤油を少し垂らした。

おお、これもいけません。

噛めばおこげは、ミリミリと音を立て砕けていく。

そこに熱せられた醤油の香ばしさが加わるのである。

醤油が焼けていないのに、お煎餅のような香りがあって、それが米の焦げ香と交わる。

食欲がどうしようもなく掻き立てられる。

もうお腹ががはち切れそうなのに、お腹が空く、危険な締めのご飯であった。

 

しかし翌日に、再びTKGと対面するとは思わなかった。

「ヴィラサントリーニ」である。

イタリア料理のフルコースの締めとして、TKGが出されたのであった。

土鍋の蓋を取る、

昆布の下に輝く米が現れた。

四万十川の源泉近くの大野見村で栽培されるひのひかりで、大野見米を炊いたのだという。

米はそっとよそわれ、甘い香りであたりを満たす。

スプーンに醤油と土佐ジローの卵の黄身だけが乗せられ、それを熱いご飯にかけて、ゆっくりかき混ぜる。

ああ、これもいけません。

大野見米は独立心が強い。

一粒一粒が、歯と舌の上で、どうだとばかり甘みを弾けさせ、甘い香りを放つ。

こんなたくましい米だからこそ白身が混じらない、黄身だけの甘さと抱き合い、新たな高みに登っていく。

これこそ米も卵もたくましい、高知ならではの幸福である。

 

高知市廿代町「座屋(いざりや)」&土佐市宇佐町竜「ヴィラサントリーニ」にて