高知家の◯◯
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「鳥のトップアスリート、最高の卵だけではない、土佐ジローの根性を感じる濃い滋味を味わえ」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その85

この情報は2020年1月26日時点の情報となります。

アンジャッシュ渡部さんの「食べ歩き道の師匠」のマッキー牧元さん。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」

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「こんなとこに本当に店あるの?」

という言葉がつい出てしまう。

もう国道から山道に入って20キロ、いけどもいけども人家がまばらな道を行く。

そうやってようやく着いた。

「はたやま憩いの家」は、土佐ジローの料理専門店だという。土佐ジローといったら卵である。

卵かけご飯にしたら、日本一うまいと信じて疑わない卵である。

だが肉は食べたことがない。

実は高知の人も、ほとんど食べたことがないという。

「いらっしゃいませ」。

店に入ると、社長の小松圭子さんとご主人の小松靖一さんが笑顔で出迎えてくれた。

人里離れた場所で出会う笑顔は、ことのほかうれしい。

お二人は、なんとか土佐ジローの肉を世の中に出そうと苦心されてきた。

なぜなら、生育するまでの飼育に150日ほどかかり、生産効率が悪いため、今までは食肉用ではなく、卵ばかりが重宝されてきた。

そこでなんとか流通ルートに乗せてプレミアムをつけるべく、また多くの人に味わいを知ってもらうべく、この店をやられているのだという。

さあそれでは、食べてみよう。

まずは虎杖と首皮  煮こごりと前菜に続き、胸肉のたたきが出された。

うっすらと赤い色合いが美しい。

ぐっと歯に食い込む歯ごたえがあり、ぽん酢が添えられるが、塩だけでも充分に旨味を感じられる。

続いてご主人自ら、各部位を網焼きしていただくことになった。

ソリ(モモ肉の括約筋)は、 食べていくと、どんどん旨味が膨らんで行く。

噛んでいくと、喉に落ちかかる手前で、いきなり旨味が上がる。

こいつはいい。

次の胸肉で、通常は淡い味の部位だが、中に濃い味わいを秘めている。

ササミはまた、旨味強く、余韻が長く、あのいつも知っているササミより、食感がたくましい。しっかりした味わい。

どれも柔な鳥とは違う根性がある。

土佐ジローは、アスリートなのだろうか。

それを証明するのがモモ肉で、実に雄々しい食感で、噛む喜びがある。

クリッとした食感の皮にも、たっぷりた旨味があって、脂はあるものの、脂がだれていない。

砂肝は、かすかに嫌な匂いがする時があるが、それは全くなく、トサカはコリコリとした食感で楽しい。

通常より小さいハツは、甘く、よく焼きにされたレバーも、優しい甘みに満ちている。

十二指腸は弾むような食感が痛快で、白子には、たらこ的卵の旨味がある。

「モモが十だとしたら、胸が八割  ササミが六割くらいで焼くのがコツかな」

肉が素晴らしいだけでなく、ご主人の焼き具合も見事なのである。

焼きが終わると、土佐ジローのスープで煮込み鍋となった。

根性のある肉から出た、スープの滋味が深い。

締めは、親子丼、そばねり、TKGとした。

そば練りとは、そば粉をお湯でねってゆずと醤油かけて食べていた郷土料理からヒントを得て、細かく切った鳥と野菜を入れて練り上げ、うどんつゆで食べる料理である。

素朴な味わいが、心を落ち着かせる。

最後の、最後の締めは、やはり卵かけご飯だろう。

世界最高の卵かけご飯を食べて、幸せに浸りながら思う。

よし今度は、ここに泊まっちゃうぞと。

 

高知県安芸市畑山「はたやま憩の家」にて