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「まったく違う。食感も味わいも香りも違う。真の姿を残すかまぼこに驚かされた」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その91

この情報は2020年3月15日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は高知市の「土佐蒲鉾」を訪ねた。

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かまぼこの概念を変えるかまぼこである。

いやこれが本来のかまぼこの味なのだろう。

板にくっついて白い半円を描く姿自体は、我々が普段食べているものとは、なんら変りがない。

しかし食べて驚いた。

噛めばあのプリッとした食感はなく、ふんわりと歯が吸い込まれていく。

ほのかな甘みが広がって、気分を優しくさせる。

これは噛むより、舌の上で潰すよう食べるのがいいだろう。

そうすれば、より一層、この繊細な甘味に心を傾けられる。

余計な甘みが皆無なので、まったく飽きがこないし、ご飯のおかずとして食べたい。

普通かまぼこはデンプンを入れる。

うま味調味料や、場合によっては砂糖も入れる。

しかし「土佐蒲鉾」のかまぼこは、現社長が会社を受け継いでから、一切入れることをやめたのだという。

かまぼこは、本来魚肉と塩だけで作られていた。

しかしそれでは保存性が悪く、また量もたくさんできないので、デンプンを入れるようになっていく。

1キロのデンプンに対し、水5キロを入れないと成り立たないという。

つまりそれだけ魚の味が薄まり、結果として味付けをしないと成り立たなくなってしまう。

おいしさは出るが、魚の味からは遠ざかっていく。

「土佐蒲鉾」のかまぼこは、北海道のスケソウダラと瀬戸内海や高知の鱧を使っている。

しかも鱧が6割使われているという。

魚本来の甘みなだから、味わいが透き通って、嫌味がない。

「うちのかまぼこが、おいしいと言ってくれるのは嬉しいのですが、それは鱧に言ってくれ、と言っています」と、社長は笑う。

色を白くさせる卵白も、入っていない、魚だけの自然な甘みなのである。

「古来からの、本当にお勧めできるのものを、お客さんにお勧めしたい。そう思い、私が会社を受け継いだときに、多量に在庫をしていた保存料や化学調味料は、全部捨てさせました。取っておけば、いつか使ってしまうのが人間ですから」と、潔い。

高知県人に人気のある「すまき」は天然着色料を使い、ジャコの風味がする土佐天や角天は遺伝子組み換えをしていない菜種による、消炎剤が入っていない菜種油で揚げる。

ナルトの色合いは紅麹を使うが、蛍光灯で色褪せるために、外側ではなく中から渦を描くように作った。

吹き寄せは、豆腐と野菜だけで作り、ちくわの焼き色をつけるための味醂は、本味醂を使う。

一度食べてみて欲しい。

本来のかまぼこが、どんな味なのか、食べてみて欲しい。

その穏やかなる旨味を、品のある味を楽しんで欲しい。

このかまぼこ類を食べれば、かまぼこというものを考え出した、先人たちの叡智に頭がさがる。

「お客さんが美味しく食べるために邪魔しないのが、我々の仕事です」と、社長は言われた。

ものづくりの人は、皆誠実でなくてはいけない。

これぞ、いごっそうの仕事ぶりである。

 

高知県高知市長浜「土佐蒲鉾」にて