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「優しいがたくましい。広末涼子が長年ハマっているうどん屋さんとは」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その92

この情報は2020年3月22日時点の情報となります。

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。今回は高知市の隠れ家的うどん屋「麺房三宅」を訪ねた。

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「うどんはここでしか食べないんです」。

テレビで広末涼子が、そう明言していたうどん屋がある。

高知は、うどんとはあまり縁のない県と思われているが、このコラムを読んでいる方はご存知のように、うどん実力県なのである。

その中でも高知出身の彼女が、小学校時代から通い、他の地方でも浮気せずにたった一軒通い続けているうどん屋があると聞けば、そりゃあ行きたくなる。

高知市にある「麺房 三宅」である。

店は街内ではなく、閑静な住宅街の中に、ひっそりと佇んでいた。

しかし、中に入ると満席である。

大勢のお客さんが、一心不乱にうどんをすすっていた。

中庭にも席があって、今の時期はここが気持ちよかろうなあ。

まず、 天ぷらぶっかけを頼んでみた。

ぶっかけの上に、人参、シソ、サツマイモ、エビ、フキノトウ、玉ねぎの天ぷらが載っている。

つるる。

うどんをすする。

箸で持ち上げ、口中に吸い込むと、むにょーんと伸びた。

途中、歯で千切ろうとしたが、ちぎれない。

柔らかいのだが、根性がある、不思議なうどんである。

そんなうどんを噛んでいくと、小麦粉の甘みがにじみ出る。

とにかく噛んだ一瞬は柔いなあと思うのだが、噛んでも噛んでも喉に消えていかない。

讃岐うどんが、男性的な凛々しいコシだとしたら、これは一瞬穏やかな表情を見せながら、芯では“はちきん”のたくましさが燃えている。

あるいは、男勝りで気が強い高知の女性である“はちきん”の中に、優しさを見たような感もある。

その二面性というか、複雑さにハマる。

讃岐ほどで強くなく、大阪ほど柔らかくなく、その中間と言いましょうか。凛々しさの中に柔らかさがある。

それが「三宅」の個性である。

すっかり気に入って、次は温かいきつねうどんをお願いした。

つゆは昆布の味がスッキリ出て上品である。

そしてなにより、お揚げがふっくらとして出汁がしみて、しみじみとおいしい。

全国きつねうどん10傑を選べと言われれば、選びたくなるうどんである。

この場所でやられたのは、平成8年1月からということだが、その前は13年別の場所でやられていたという。

つまり、46年もやられている。

お出汁は、羅臼と日高混ぜ、メジカと鯖節でとっているという。

ご主人は、昼からの営業のため、毎日朝5時20分から始動される。

うどんを練って、踏んで、寝かせて、打つ。

お出汁を引き、おつゆを整え、天ぷらの下ごしらえをする。

そして注文が入ると、天ぷらを揚げ、うどんを茹でる。

いや違う。

普通の店だとそうだろう。

ここはうどんを35分間茹でるのである。

だからある程度お客さんが来るのを見越して、逐次うどんを茹でているのだという。

だからあの柔らかさとコシの強さが生まれるのである。

「うどん、とても美味しかったです」。

そうご主人に伝えると

「その言葉を聞くためにやっています」と、笑われた。

高知県高知市伊勢崎町「麺房 三宅」にて