タベアルキスト マッキー牧元の高知満腹日記「あなたはキクラゲの卵を知っていますか?」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

シイタケの母は、危機に面していた。

前号でご紹介した、「宗安寺きのこセンター」の大坪久仁子さん(75)である。

しいたけ栽培は軌道に乗り、ナメコやキクラゲも生産できるようになって、ビジネスとしても成功していた。

しかし平成14年の集中豪雨で施設が浸水し、菌床に被害が出、直後に夫がなくなるご不幸も重なったのである。

なんとか施設を修繕し、被害前の5割ほどまで生産ができるようになったが、70歳となって気力も体力も落ち、きのこを作っていこうという思いが萎えかける。

後継者はいない。

そんな時、たまたま知人から話を聞いて訪ねてきたのが、森雄二さん(50)だった。

森さんは在京デベロッパーの高知支社長という、まったく関係ない仕事をしていたという。

しかし、いつかは農業で独立したいという考えを持っていた森さんは、大坪さんと何回か話すうちに、きのこ作りを一生の仕事にすることを決意した。

大坪さんは事業譲渡し、森さんが受け継いだ。

だが、施設も技術も確立していたとはいえ、きのこづくりは簡単にはいかない。

人工栽培とはいっても、相手は自然である。

今も大坪さんの厳しい指導を得ながら、試行錯誤を続けている。

菌床を見せていただいた。

湿度と温度が管理された、薄暗い施設の中で、菌床が息づいている。

もうキノコがニョキッと顔を出しているのもあれば、まだ菌が眠りについているのもある。

しいたけとキクラゲ、冬にはヒラタケとナメコを作るという。

暗く、静かな部屋の中で、成長しようとするキノコには、生命の神秘があり、生かし生かされている感謝が湧き上がる。

「最近凝ってこればっかり食べゆう」。

そういって、大坪さんが調理して出してくれた。

皿の中には、表面がゴツゴツした黒い物体が、ぬめぬめと光っている。

甘辛く味付けされたそいつを食べれば、シコッと弾み、香りもいい。

「なんですかこれ?」

「これは、キクラゲの卵よ」

「キクラゲの卵?」

「そう。まあそう勝手に言いゆうけどね。キクラゲが出る前にコブ状になったキクラゲがいくつか出るがよ。それはキクラゲの形にはならん。この塊の形のままやき」。

平たく薄いキクラゲが、小さい塊になったと思ってもらうといい。

食べて思った。これは中国料理で使う乾燥ナマコを戻したものと食感が似ている。形も似ている。

しかもナマコより味も濃く香りもある。

中国料理で使えるのではないか。

そう思い早速都内の中国料理店に持ち込んでみた。

ミシュランの星を持つ中国料理店のシェフは、「これは素晴らしい。 葱焼海参という、 干しナマコのネギ煮込みの様に作りましたが、 びっくりするほど美味しかったです。 また生が入るようでしたら、是非使わせて頂きたいです。うちの看板料理の一つになるかもしれないと思いました」。

また都内で3店舗ほど店をやられている、中国料理店のオーナーシェフは、早くも3品ほど作って試食し、「かなり食感が面白いですね!クラゲの頭のような形ですので、木耳(キクラゲ)頭のネーミングか黒宝石茸などもいいですね!」と、コーフンしたメールが返ってきた。

キクラゲの卵おそるべし。

木耳子か黒宝石茸か、山海鼠か。

近い将来、貴重食材として、美食家たちの間で取り合いになるに違いない。

生産者情報

宗安寺きのこセンター

住所:高知県高知市宗安寺841-1

TEL:090-1573-4786

HP:https://kinokocenter.com/

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