タベアルキスト マッキー牧元の高知満腹日記「ウツボはすき焼きに限る!!久礼の漁師料理に悦楽を得たの巻」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

ウツボといえば今では高級魚だが、昔は雑魚だったという。

「昔は市場で笑いよったら、漁師が「取っていけ」いうてタダでくれよったがよ。けんど、いつの間にやら高級魚になりよった。ガハハハ」。

そう久礼の川島昭代司さんは言って、豪快に笑った。

川島さんは青柳裕介の漫画「土佐の一本釣り」のモデルになった人である。

漁師の純平と鰹節工場で働く八千代との、不器用で純な愛の話だったなあ。

川島さんは今漁師を引退し、久礼でスナック「ろんどなあ」を経営されている。

その川島さんが「ウツボのすき焼き」を作ってくれるという。

「えっ? ウツボといえばタタキじゃないの?」と聞く。

タタキは高知市内の居酒屋には必ずある、高知の名物料理である。

「いやウツボは、すき焼きよ」と、川島さん胸を張る。

すき焼き煮で食べるようになったのは事情があるらしい。

「昔の爺さんの頃は、牛肉が高いき手に入らんろう。それやき、すき焼きという料理に憧れちょった。そんで安いウツボで代用したがよ」。

可愛い話である。でもそんな爺さんたちも、ウツボの値段が肉と肩を並べる時代になるとは、思いもしなかっただろうなあ。

まず、ウツボの解体を見せてくれるというので、大正町市場の田中鮮魚店に向かった。

基本的には鱧やウナギ、穴子と一緒だが、よりぬめりがあり、より硬く、骨が太いため、一筋縄ではいかない。

出刃を使い、慎重に、ゆっくりさばいていく。

さあ、用意はできた。それではすき焼きといってみよう。

ぶつ切りにしたウツボの他には、玉ねぎ、こんにゃく、ニンニクの葉、ネギ、豆腐、笹掻きごぼうが用意される。

この中で最も肝心なのは、ニンニクの葉である。

「久礼の人はニンニクの葉が好きよ。肉のすき焼きにも入れる。季節外れでニンニク葉が無いときはニラでごまかす。」という。

つまりニンニクの葉が出回るのは、10月から4月であり、ウツボの旬は冬であるから、「ウツボすき焼き」は、冬から春がいいということであり、最高の出会いものなのである。

「あと肝心なのは、こんにゃくを手でちぎること、包丁で切ってはうまくない。」

手でちぎった複雑な断面に、味が乗る。だからだろう。

さあすき焼きが始まった。

玉ねぎを炒め、ウツボと他の具を入れ、甘辛い醤油ベースの割り下を注ぐ。

「ぐつぐつ」。

ウツボやニンニクの葉が踊り出す。

もうその光景だけでたまりません。

まずウツボからいってみよう。

ふんわりと歯が包まれたかと思うと、皮下のコラーゲンがぬるんと弾ける

身を噛み締めればじんわりと甘く、それが割下の味に馴染んでなんともうまい。

コラーゲンのたくましさだろう、他の白身では割下の味に負けてしまうが、堂々たる存在感があって、気持ちを高揚させる。

ニンニクの葉はシャキシャキと音を立て、かすかにニンニク香を漂わせる。

この食感がウツボの食感と対比して、箸を持つ手が止まらなくなってくる。

「うまい! タタキより、ウツボはすき焼きですね」。

そういうと川島さんは

「そうよ。ウツボは意外と小心で繊細なところもある、それに好物の伊勢海老をよう食べゆうき、うまくないわけがない ガハハハ」。

そうやって、また嬉しそうに笑うのだった。

 

高知県中土佐町久礼大正町市場にて

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