タベアルキスト マッキー牧元の高知満腹日記「真っ青な目に染みる海、紺碧なる空、そして輝く白。高知にギリシャがあった」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなすタベアルキストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

ここには、静寂しかない。

耳をすましても、吹き抜ける風の音しか聞こえない

そして青と白しかない。

空と海の青と、雲と建物の白の二色が、都会生活で錆び付いた体を清めていく。

静寂が現代において、どれほど贅沢なことか。

素朴な青と白に包まれることが、どれほど裕福なことなのだろうか。

「ヴィラサントリーニ」は、高知県土佐市宇佐町の断崖の上に建てられている。

周囲のリアス式海岸を作る半島の断崖であり、オーナーはギリシャのサントリーニ島と風景がよく似ていることから、開設を思いついたのだという。

独立した部屋はすべて海に向かって開かれており、景色と宿泊者を遮るものはなにもない。

昼は、目前に広がる太平洋を眺め、夜は満天の星に包まれる。

そして朝は、水平線から昇る太陽を浴びることができる。

ここには、非日常という贅沢がある。

一泊して、どうしようもなく数日泊まりたくなった。

実際連泊を重ねる常連も多いという。

「ヴィラサントリーニ」のもう一つの魅力は、夕食にある。

イタリア料理出身の若き井原尚徳シェフが作る、高知の食材を駆使した、この地でしか味わえない素晴らしき料理がいただけるのである。

ではその料理を紹介しよう。

静けさに闇が忍び寄るダイニングで、8皿の料理をいただいた。

 

 

1. 高知産インカのめざめを使ったびっくりトリュフ

2. カツオのタリアータ。黒にんにくと醤油のソース、土佐酢の泡、塩と四万十海苔、春野町キャビア、フェンネルやディルなど、数種類の野菜のガスパチョ添え


なんといってもカツオの身が滑らかでしなやかに口の中で崩れていく。

香草の香りが、カツオの鉄分の香りを華やかにさせ、三日間かけて漉したというガスパッチョの澄んだ味をカツオと合わせれば、海と山の共鳴が響きあう。

3・フォアグラのブディーノ(茶碗蒸し状)、コンフィした蕪と蕪の葉ソース。

まず蕪の生き生きとしたい香りが鼻を刺す。フォアグラは味支え。そんなカブの甘みと香りをフォアグラのコクがそこで支えている。

フォアグラをあえて脇役にし、蕪の力を信じた料理が、清々しい。

4・ホエーに漬けた黒ムツの炭火焼、ヴァンブランソース、原木なめこ、焼き菜花。

ただ焼くと少し野暮ったい黒ムツに、色気が忍び寄っていた。

食べればしっとりとして、身が舌に吸い付くように口の中で崩れていく。

脂をじっとりとまとわせ、静かな甘みを滲ませ、誘惑する。

「ああうまい」。思わず呟いた。

ヴァンブランソースは旨味と酸味で料理をふくらませ、焼き菜花は香りと苦味でアクセントをつける。

5・カカオを練りこんだタリアッテレ、猪と四方竹のソース。上にブラックカカオとナツメグがかかっている。

カカオの甘い香りの中で、イノシシの滋味が笑う。

このイノシシ肉を塩漬けにしてカルボナーラも作るのだという。

次回は食べたいぞ。

6・土佐あかうし ハラミの炭火焼。

ハラミの炭火焼は、歯と歯の間でくにゃりと悶え、噛み切られると、血の味を叩きつける。

同時に脂の甘い香りが抜けていく。

その両者が混じり合うと、どうだ食えといった肉の強さより、のどかな雰囲気があって、和牛としてのたしなみを感じるのである。

さらに塩二郎の塩を振りかけてしばらく置いてから噛み込むとどうだろう。

なにやら甘い味わいが膨らんで、顔がどうしようもなく崩れるのであった。

土佐あかうしの猛々しさの中に潜んだ、繊細を生かした料理である。

7・池上千佳さんが作る土佐ジローの卵と、ご飯

8・「こたつ」。干し柿のジェラートと山北みかんのスフレグラッセ、みかんの皮と白チョコレート、マディラ、ルビーポート

こたつと名付けられているように、コタツの中でみかんを食べた思い出を表現した、心が暖まる料理である。

これらをギリシャのワインを飲みながら、ゆっくりと食べていく。

海と空は闇に沈み、遠くに船の灯、星の輝きが見える。

優れた、優しい料理をいただきながら、悠久の時間が過ぎていくような感覚がある。

ああ、なんと幸せなのだろう。

 

高知県土佐市宇佐町「ヴィラサントリーニ」にて

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