「高知で心のひなたを探し出せ。燗酒の名店ここにあり」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その55

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

高知にも静かな夜はある。

この店に来た時、そんな言葉が浮かんで来た。

酒飲み天国高知では、どの居酒屋へ行っても賑やかである。

よく食べ、よく飲み、よく喋り、よく笑う。

どの店でも、美味しい賑わいに満ちていて、「それ飲めえ」とばかりに、背中を押される。

しかしここは違った。

高知市内にありながら、周囲に飲食店などなき場所で、ぽつねんと営業している。

「ヒナタ」という店名ながら「日陰」のような立地である。

店にはご主人一人、カウンター席は独酌客が多い。

皆静かに、酒をじっくり傾けながら、自分の時間と会話をしている。

酒のメニューを見れば、睡龍、久米桜、辨天娘、天隠、梅津、竹鶴など、日本酒好きが涎を垂らしそうな、甘口の銘酒がずらりと揃う。

この店では、これをすべて燗酒で出すのである。

わかってらっしゃる。

燗酒で飲んでうまくない酒は、いい酒ではない。

手書きされた黒板には、酒飲みのツボをつく、和洋の肴がずらりと並ぶ。

ううむ悩むなあ。嬉しい悩みである。

悩み抜いて頼んだ、「燻製鶏と純胡椒のポテトサラダ」は、胡椒の辛味が、ポテトの甘みを引き締め、「トマトのお浸し」は、そのつけ汁だけで、酒がグイグイと飲める。

鶏肝オイル漬けは、ねっとりと甘く、「入河内大根のポタージュ」は、心をじっとりと温める。

こうした肴を相手に、適温に燗がついた酒を飲む。

都会の汗が抜け、時間がゆっくりと過ぎてゆく。

何かこう、本当の自分を取り戻すような感があって、脳と心が沈静化していった。

そうかここは日陰ではない。

自分だけのひなたを見つける場所なのだ。

 

高知県高知市上町1丁目「サケとサカナ ヒナタ」にて

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