「〆もたまらん!軍鶏と鯨、高知で極上鍋をいただく夜の巻」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その56

食通で有名なアンジャッシュ渡部さんが、食べ歩き道の師匠と呼ぶマッキー牧元さん。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

たまには一人鍋もいい。

大勢でつつく鍋も楽しいが、一人しんみりと鍋と向き合う。

そんな夜があってもいい。

そう思いやってきたのが、「土佐料理 土佐っ子」である。

ここには「軍鶏鍋」と「はりはり鍋」の用意がある。

帳が下りた繁華街の静かな場所に、料亭風な品格漂う構えを見せる店の、暖簾をくぐる。

打ち水された石畳を歩き、引き戸を開ければ、「いらっしゃいませえ」と、満面に笑みを浮かべた若女将が、快活に挨拶された。

大勢なら二階の個室座敷もいいが、今日は一人、カウンターに座ろう。

まずは刺身で一杯ということで、「ねいり」を頼んだ。

ねいりとは、カンパチの幼魚である。

食べれば、幼魚とはいえ脂が乗っていて、身に滑らかに歯が入っていく。

脂の品がよく、酒が進む。

さあ、次は鍋と行こう。

「軍鶏鍋」と「はりはり鍋」だが、両方とも一人前とはいえ、二人で食べても十分な量があるとことが嬉しい。

昆布出汁と鶏ガラを合わせ、濃口醤油とみりんで味つけた「軍鶏鍋」の鍋つゆは、軍鶏の凛々しい肉質と、噛むごとに滲み出る滋味と、よく合う。

ザクは、葱にごぼう、白菜、こんにゃく、シイタケにエノキである。

よく運動しているのだろう。軍鶏には、噛みしめる喜びがある。

締めはうどんが用意されているが、軍鶏の出汁がよくよく出ているので、それを吸わせたいと思い、特別に雑炊をお願いした。

正解である。

軍鶏の滋味を吸って、ふっくらと膨らんだ卵閉じご飯が。たまらない。

一方、「はりはり鍋」はどうだろう。

昆布出汁と薄口、味醂、砂糖で味つけた鍋つゆに、クジラの脂身と赤身を入れていく。

かつて高知では、鯨漁が盛んだったという。

頻繁にクジラを食べた高知県人の誇りが、クジラの身に宿っている。

なにより脂身がいい。

魚でも動物でもない、特有の猛々しい香りを放ちながら、脂はすうっと甘く溶けていく。

鍋つゆにクジラの脂が溶け込んで、ギラリと輝き出す。

こいつは、うどんだな。

わざとふにゃふにゃになるまで煮込んで、うどんにクジラの香りを染み込ませる。

ツルルとすすれば、うどんの一本一本が、クジラの脂と化している。

鼻息は荒くなり、体は上気して、一気に食べ終えた。

ああ、もうたまらんぜよ。

 

高知県高知市追手筋「土佐料理 土佐っ子」にて、快活で朗らかな若女将とともに。

 

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