「心をほのぼのと温める、むし寿しの湯気の向こうに高知県人の優しさを見たの巻」食べ歩きスト マッキー牧元の高知満腹日記 その66

アンジャッシュ渡部さんの「食べ歩き道の師匠」、マッキー牧元さん。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

「土佐の高知の風物詩 むし寿し」という文字が目に入ってきた。

高知の寿司といえば、農家の人たちが作る「土佐田舎寿司」である。

それ以外に名物があるのだろうか?

しかも店は相当古そうである。

「昭和26年創業」と記され、菊紋がついた木製看板のうえには、赤い欄干が設えられている。

気になってしかたなく、入ってみることにした。

メニューを開けば、「むし寿司」の他に、カツオを巻いた「土佐巻き」、「鯖の棒鮨」もあるではないか。

ううむ。悩む。悩みに悩み、ええい、みんな頼んじゃえ。

まずは、鯖の棒寿司である。

一見、他の鯖寿司と変わらぬようだが、ゆず酢を効かせた酢飯に、ゴマと刻み大葉を混ぜてあるのが、特徴である。

鯖に脂が乗っていて、その脂をゆず酢と大葉の爽やかな香りが受け止める。

これはいい。家でも作ってみよう。

続いて、「土佐巻き」である。

カツオのたたき、大葉、ネギ、生姜、醤油、ニンニクを海苔巻きにしたという。

つまり鰹のタタキ料理をまんま、酢飯と海苔で巻きましたというわけなのね。

ふふふ。これも笑ってしまう美味しさよ。

ただ鰹のタタキ料理を巻きましたというのではなく、それぞれの具の量がよく考えられていて、バランスがいい。

実は、この「土佐巻き」も「鯖の棒鮨」もこの店のオリジナルで、先代の時代に社内コンテストで勝ち残って、完成したものだという。

さあ、お次は、いよいよ真打、「むし寿し」である。

おお、塗りの蒸籠に収まった姿が、可愛らしい。

酢の香りが温まって立ち上り、顔を包む。

具は右から、錦糸卵、しらすちくわ、でんぶ、グリンピース、ウツボのミンチの煮詰めがけ、玉子焼き、という布陣である。

整然と並んだ、黄色、こげ茶、白、緑、桃色の配色が、目に優しい。

まず温かいご飯を食べてみれば、ほのかに甘い。

ご飯に、黒糖と煮椎茸をまぜ混んであるのだという。

このご飯に、様々な具が絡ませながら食べていく。

小さな贅沢があって、なにかこう、ほのぼのとした気分が訪れる。

冬の凍てついた体も温めるだろう、優しさに満ちている。

「菊寿し」は、昭和26年に食堂としてスタートし、その後大阪から寿司職人を呼んで寿司を始めたのだという。

「むし寿し」は現在の店主の祖父にあたる初代が考案し、独自の味付けをして売り出したら人気を博したということである。

元々は冬場限定だったが、帰省する人の希望があって、通年出すようになった。

その気持ちはわかる。

僕は高知県人ではないが、また高知に来たら食べたい。

「むし寿し」には、そう思わせる地力がある。

 

高知県高知市帯屋町1丁目「菊寿し」にて

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