「深夜だろうと4軒目だろうと、この店に来たらダイエットはさようなら、こじゃんと餃子や麺を食べて酔っ払うしかないのだな。」食べ歩きスト・マッキー牧元の高知満腹日記 その68

アンジャッシュ渡部さんの「食べ歩き道の師匠」、マッキー牧元さん。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演を超多忙にこなす食べ歩きストのマッキー牧元さんが高知の食材・生産者さんをめぐって紹介する「高知満腹日記」。

餃子で泣いたのは、生まれてはじめてである。

高知「よこじい」の、葉わさび餃子に泣かされた。

メニューに見つけて、こりゃ頼まんといかんと頼んでみたのである、

聞けば葉わさびが、こじゃんと入っちゅう。

一口目、二口目はなんともないけど、七回噛んだあたりから葉わさびが顔を出す。

鼻奥を蹴飛ばされ、涙が一筋、つうっと流れるのであった。

高知の可愛い不良じいさんが一人で営む「よこじい」に来たら、ダイエットなぞ忘れるしかない。

大抵は、3〜4軒目に来るのだが、料理が、次々と我々の食欲をたきつけるのである。

シンプルで皮が薄く、小さい「餃子」は香ばしく、一方「醤油餃子」は、サクサクとした食感で、ニンニクとゴマが効いとる。

さらに「梅ネギ餃子」は、梅干入りとネギ入りで、ほどよい酸っぱさが癖になる。

さらには餃子だけでないから、困っちゅう。

ジャコがたっぷり入った「ネギとジャコの玉子焼き」は、硬めのジャコを噛んだ時の香りとネギの香りが入り混じって、たまらん。

せせりはタレの具合が鶏のうまさを引き出して、豚ニラは、味付けの甘辛さが豚肉の甘さと響き合って箸が止らない。

ある日の深夜には、

「ラーメン食べたいんだけど、体に優しいのはない?」と、尋ねると、

「なら、シジミラーメンを、麺少なめで作ろうか」という。

「はいお願いします」

国分川の汽水域で取れるという、でかいシジミを、徹底的に砂をはかせてから冷凍して旨味をふくらまし、水に入れてスープを取る。後は、塩とネギと生姜だけ。

みよ。この澄んだスープを。

塩加減が精妙で、味が澄んで、体に力がみなぎる。

酔いに、シジミラーメンの包容力が溶けて、心が豊かになる。

「こんな手間かけているのに、なぜ裏メニューなんですか?」と聞くと、

「みんなが頼むと、めんどくさいやろ」と、よこじいが嬉しそうに笑った。

よこじいは、どこまでも優しく、料理上手で、一徹なのである。

そんな彼が好きで、みんなここに足を運ぶ。

そういえば昔、したたかに飲んだ後に深夜に店に入り

「なにか体に優しいラーメンが食べたい」と言ったら、

「よし、それなら、メニューにはないけど、どこでも食べたことない奴作ったる」。そういってよこじいは動き出した.

「飲んだ後に肉はいらんろう。うどんにしようかと思うても、ラーメンも食べたい。これはラーメンとうどんの中間やき」。

そう言って、和風のダシにラーメンの細麺を入れて、竹輪とカマボコの薄切り、天かすに鶏肉、たっぷりのネギを具にした麺料理を作ってくれた。

透き通ったスープが優しく、アルコールを中和させながら胃袋に消えていく。

「これはうまい。初めて食べる組み合わせや」というと、ヨコジイは、子供のような笑顔で笑った。

またある日は、食べて飲んでもどこか別れがたく、次の日の夜にもよこじいと一緒に、「龍馬」という店に繰り出すことを約束した。

一見ぶっきらぼうで、愛想が悪そうな“よこじい”だったが、翌日の龍馬を予約してくれ、帰り際に、

「じゃあ明日6時に」といって、屈託のない笑顔を浮かべるのだった。

高知は、こういう「人との結び」が生まれる街なのだ。

たまらんぜよ。

 

 

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